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セキュリティマガジン TREND PARK

拡大する事業、高度化するサイバー犯罪
大阪ガスのIT戦略に見る「安心・安全」確保の要諦

これからの情報防衛は外部エキスパートとともに

 近畿圏におけるガス供給の担い手として、700万人強の日々の暮らしを支える大阪ガス。安心・安全の事業基盤を背後に持ちながら、発展と成長のステップを着実に上る同社は、「ビッグデータの利活用」など、戦略的なIT 活用を推し進める一方で、情報保護の仕組み・体制作りにも余念がない。そんな同社が、情報セキュリティの一層の強化に不可欠な要素としてとらえているもの——。それは、外部エキスパートのさらなる支援と情報だ。

拡大する事業フィールド

 大阪ガスは、近畿2府4県/110市町(2014年3月31日現在)にガスを供給し、700万人強の生活を支えるエネルギー事業会社だ。近年では、2009年度に打ち出した長期経営ビジョン「Field of Dreams 2020」の下、ビジネス領域の拡張、強靭な事業構造の確立を推し進めている。例えば、同社はすでに、大規模なガス火力発電所を日本に建設し、電力事業の運営を安定化させているほか、家庭用燃料電池「エネファーム」の累計販売台数も3万台に乗せている。また、米国シェールガスの日本への輸入販売に向けて、フリーポート液化設備の整備にも着手。シンガポール/タイでは天然ガスの販売事業を始動させた。加えて、環境・非エネルギー事業の強化にも力を注ぎ、その一環として、スウェーデンの浄水器などに用いられる活性炭の事業会社「Jacobi Carbon」を買収している。現在、Field of Dreams 2020構想は第2段階に突入し、2014年度からの新3カ年計画「Catalyze Our Dreams」がスタートを切っている。この3カ年計画では、①近畿圏におけるエネルギー事業(天然ガス、LPG、電力、など)の強化、②エネルギー事業のエリア拡大、③新たな「事業の柱」の確立の3 点が重点的に進められる予定で、活性炭を中心とした材料ソリューション、都市開発、ライフ・サービス、ITソリューション(クラウドソリューション)など、成長市場での事業展開も強化される模様だ。

効率化のITからビジネス価値創出のIT

 このように、大阪ガスの事業領域はすでに「地域ガス会社」の枠組みを大きく超えており、基幹のエネルギー事業にしても、従来の都市ガス事業から総合エネルギー事業へと着実な発展を遂げつつある。このような攻めの姿勢は、同社のIT施策にも同様に見られる。その代表例が、データ分析用の大規模情報基盤の構築と、データ分析専門組織ビジネス アナリシスセンターの設置だ。この「戦略的IT活用」の背後には、「業務の効率化・合理化」に根ざしたIT施策の積み上げがある。

 大阪ガスにおけるIT化の主眼は、長く業務の効率化に置かれていた。ただし、ITによる効率化にも限界があり、一方では、ITのコモディティ化も進む。そんな中で、「ITによる業務効率化」で他社との差別化を図るのも、また、経営上の大きなメリットを創出するのも、困難だった。

 「そこでIT施策の中心を業務の効率化からデータの利活用へとシフトさせ、ITの経営価値を改めて高めようと考えたわけです」と、大阪ガス 情報通信部の綾部 雅之部長は言う。要するに、業務の効率化・合理化という観点では「打つべきIT施策はすべて打ち」、そのうえで、ビジネス・データの有効活用に乗り出したということだ。

 もちろん、同社のITリソースのほとんどがデータの利活用・ビジネス分析の領域に振り向けられているわけではなく、業務を安定的に回すためのITの維持管理にも相応のリソースが割かれている。ただし、同社の場合、標準化や集約化など、IT基盤の構造改革にも積極的に取り組んできたことから、ITコスト(維持管理コスト)はかなり抑えられているようだ。

 「当社では、IT基盤の標準化や仮想化に早い時期(2000年ごろ)から取り組み、オープンソース・ソフトウェア活用も積極的に進めてきました。結果、業務アプリケーションのサーバ台数は10台レベルにまで集約化が進んでいます。この集約レベルは、世間と比較しても高いでしょう」と、大阪ガス 情報通信部の企画管理チームでマネジャーを務める柴田 雅博氏は語る。

大阪ガスのビッグデータ活用

 大阪ガスでは大量データの利活用を支える大規模な情報基盤を保持し、その基盤を背後にしながら、「現場の業務から経営まで、あらゆる領域の改革を目的にしたビジネス分析を推進しています」(情報推進部ビジネスアナリシスセンター 河本 薫 所長)という。例えば、すでに同社では、ガス供給で何らかのトラブルが発生した際に、「より早く現場に到着する」ために緊急車両の最適な配置場所を割り出す「車両出動シミュレータ」を開発・ 提供している。また、ガス機器修理に関する過去10年分の約400万件の修理データを分析し、故障部品の予測モデルを開発、ガス機器メンテナンス作業の効率化に役立てている。

膨らむトレンドマイクロへの期待

大阪ガス株式会社 情報通信部長 綾部 雅之氏「サイバー攻撃が多様化・高度化するなか、外部の専門家による支援と情報はますます重要になっています。その点で、トレンドマイクロにかける期待は非常に大きいですね」と話す。

 データの利活用が進めば、当然、経営/ビジネス上のさまざまな利が創出されるが、一方で、重要データの外部流出リスクが高まりかねない。そのため大阪ガスでは、分析に利用する情報基盤について、きわめて厳格なアクセス制限を敷き、セキュリティ管理の徹底に努めている。また大阪ガスは、この情報基盤のみならず、事業を支えるすべてのIT環境に対して、できうる限りのセキュリティ施策を適用してきたと、綾部氏は言う。

 「情報セキュリティは、どこか1つに漏れがあると、すべてが瓦解します。ですからインフラの保護、人の教育、システム/ネットワークの監査・監視など、あらゆる施策を包括的に展開し、全体に漏れがないようにしなければなりません」

 加えて、大阪ガスではVDI(仮想デスクトップ基盤)の導入も進めている。これにより、従業員の端末やワークスタイルに柔軟性を持たせながら、情報セキュリティ管理の効率化、強化を実現する模様だ。

 それでも、サイバー攻撃の高度化に対抗していけるかどうは不確かだと綾部氏は指摘する。
 「我々は情報セキュリティの専門家ではありません。ところが、攻撃の手口はますます巧妙化・高度化してくるとされています。となれば、我々の努力とツールだけでは、すべての攻撃を防ぎ切れなくなると考えるのが妥当でしょう」

 そこで重要になるのがセキュリティ・ベンダーやエキスパートの支援であり、バックアップであると綾部氏は語る。さらに、「物理的な警備保障と同じく、もはやIT分野もセキュリティは外部の専門家による監視が不可欠でしょう」と付け加える。

 そんな同氏にとって、トレンドマイクロは有望なパートナーであるようだ。
 綾部氏はこう話を締めくくる。
 「トレンドマイクロ製品との付き合いは10年以上になりますが、トレンドマイクロの場合、ツールの提供のみならず、専門的で最新の情報や他のユーザとの情報交換の場を提供してくれます。このようなサービスを提供してくれるセキュリティ・ツール・ベンダーは他にはなく、その点で、トレンドマイクロの今後の支援に大きな期待をかけています」

大阪ガスの「攻め」と「守り」の情報戦略を担う情報通信部の柴田氏(企画管理チーム マネジャー/写真左)、綾部氏(写真中央)、河本氏(ビジネスアナリシスセンター所長)

社 名: 大阪ガス株式会社
創 業: 1897年4月10日
売上高: 1兆5,125億8,100万円(連結/2014年3月期)
資本金: 1,321 億6,666万円
従業員数: 2万1,250名(連結/2014年3月31日現在)
主な事業: ガスの製造・供給・販売、LPG(液化プロパンガス)の供給・販売、電力の発電・供給・販売、ガス機器の販売、ガス工事受注

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記事公開日 : 2014.10.17

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